お口の粘膜の色をみてみよう!
今回はお口の粘膜にできる病気についてです。お口の中を覆う粘膜を総称して口腔粘膜と呼んでいます。具体的には歯ぐきや唇、頬内面、舌、硬口蓋、軟口蓋などですね。歯以外全部といってもいいでしょう。私達歯医者さんがお口の中をみるときは、歯や歯ぐきだけでなく、口腔粘膜に異常がないかも常に気をくばっています。必ず治る口内炎や血豆、大きな害のない粘液のう胞(唾液が溜まっているだけ。)なんかはどうでもいいのですが、ときおり気を付けないといけない口腔粘膜病変に出くわすことがあります💦。そんな気をつけるべき口腔粘膜疾患や、特に問題は無いけれど患者さんから質問の多い口腔粘膜の状態についてみていきましょう。テーマは色🌈。白、赤、黒、黄に分けて説明していきますね😊。
- 白い口腔粘膜病変。●
◎口腔カンジダ症。◎
お口の粘膜に灰白色や乳白色の点状、線状、斑紋状の白苔がみられます。頬内面や口蓋、舌にできることがおおいですね。特徴としてはガーゼなどで簡単に拭き取ることができます。
症状としては口腔粘膜のざらざら感や味覚異常、痛みなどです。原因はお口の中の常在菌であるカンジダ菌🦠、通常は悪さをしない真菌(カビ。)です。しかし、老化や様々な病気などで体の抵抗力が落ちると発症します。日和見感染と呼んでいます。そのため御高齢の方でみかけることが多いですね😞。
対応法はお口の中を清潔に保つこと、そして抗真菌剤の使用となります。
◎口腔扁平苔癬。◎
網状、レース状の白斑に加えて赤みが伴うことも多いですね。よくできるのは頬内面と歯ぐきと頬内面の境目(歯肉頬移行部といいます。)です。女性に多く、C型肝炎ウイルスに感染している方にでやすいという報告があります💦。
無症状のこともありますが、食べ物がしみたり、触れると痛むなどの接触痛、粘膜の荒れ、味覚異常などでることも多いです。原因がはっきりわかっていませんが😞、歯科用金属に対するアレルギーや遺伝的素因、ストレスなどの関与が考えられています。
対応法としては歯科用金属アレルギーを疑う場合は金属の除去を行います。お口の中を清潔に保ち、症状が強い場合はステロイドの軟膏を塗布します。
実はこの口腔扁平苔癬、前がん病変といって注意が必要な疾患です😲。がん化率は1%程度で高くはないのですが、必ず経過観察すべき疾患で、必要があれば生検(一部を切り取り顕微鏡下で詳しく調べること。)を行います。
◎白板症。◎
口腔粘膜に除去できない白斑がみられます。形状はヒダ状、波状、平坦状、潰瘍状、結節状など結構バリエーションがあります。舌や頬内面、歯ぐきにできやすいですね。男性に多く、飲酒や喫煙をされている方にできやすいです💧。
痛みなどがなく無自覚なことが多いのが特徴です。あってもざらつきや違和感程度です。原因ははっきりわかっていないのですが、 飲酒や喫煙、歯の尖った部分による長期の刺激などが関与するといわれています。
対応法としては飲酒や喫煙に対する生活指導や歯の尖った部分があればその部位の治療や丸めてあげたりします。
この白板症も前がん病変となります😲。がん化率は5%ほどと若干高めでしょうか。特に舌に発症した場合、他の部位よりがん化率が高くことが多いようです。必ず経過観察すべき疾患で、必要があれば生検やがんに準じた切除術を行います。
- 赤い口腔粘膜疾患。●
◎紅板症。◎
境界明瞭な紅班がみられます。舌や歯ぐき、頬内面、舌の下などに多くみられます。60才以上の御高齢の方にできやすいです。
食べ物がしみる、触れると痛むなどの接触痛を伴うこともありますが、無自覚無症状なことも多いです。原因はよくわかっていません。
前がん病変のなかでもがん化率が断トツで高く、長期経過において50%のがん化率をほこります😲。かなり注意な疾患です。対応法はがんに準じた切除術を行います。
◎多形滲出性紅班。◎
粘膜に紅班、びらん、水疱などがみられます。できやすいのは頬内面、唇、舌などですね。紅板症と似ているのですが、こちらは発熱や全身倦怠感などを伴う点で異なります💦。
原因はヘルペスウイルスや肺炎マイコプラズマの感染、抗菌薬や抗炎症薬などのお薬に対する反応などが挙げられますが、原因不明のことも多いです。
重症化すると高熱や全身の皮膚にまで紅班がでてきます。ここまでくると皮膚化や内科との連携が必要な状態で、中毒性表皮壊死融解症やスティーブンス・ジョンソン(Stevens-Johnson)症候群と呼ばれます。お薬の副作用の欄によくみかける疾患です💊。
- 黒い口腔粘膜疾患。●
◎色素性母斑。◎
境界明瞭な茶褐色から黒褐色の母斑がみられます。難しく書きましたがいわゆる黒子(ほくろ。)のことです。10代から40代の女性に多い傾向があります。痛みや違和感なのでの症状はなく、無自覚なことがほとんどです。
治療の必要はないのですが、見た目の問題などで気になる場合はレーザーなどで切除することもあります。
注意点としてはお口の中に黒子ができることは少ないことです。確率は低いのですが後述する悪性黒色腫(がん。)との鑑別が必要で、広がらないか経過をみた方が安心ですね😊。
◎外来性色素沈着。◎
灰黒色や青紫色の着色がみられます。よくできるのは歯ぐきと頬内面ですね。歯科治療で金属などを切削したときにでた細かい破片などの残留や、詰め物や被せ物の金属の溶出によって起こる色素沈着です。いわゆる刺青の状態と同じで、metal tattooと呼ばれることもあります😅。
痛みや違和感などの症状はありません。基本的に治療の必要はありませんが、見た目が気になる場合はレーザーなどで切除を行います。また原因となっている詰め物や被せ物がある場合はやり替えが必要です。
◎黒毛舌。◎
舌の表面が黒く毛が生えたような状態になります。名前のまんまですね。抗菌薬やステロイドを長期で服用している方で起こる事が多いです。
原因は菌交代現象によるお口の中の細菌叢の変化のためです。菌交代現象とは生体において正常菌叢の減少などにより、通常では存在しないあるいは少数しか存在しない菌が異常に増殖を起こし、正常菌叢が乱れる現象をいいます。通常時に大勢を占める細菌が抗菌薬などで減少、普段は目立たない舌を黒くさせるばい菌が増えてしまっている状態です🦠。
痛みや違和感などの症状はありませんが、目立つ場所のため患者さんが気づくことが多いです。対応としてはお口の中を清潔に保つこと、できれば服用しているお薬の変更や中止をお願いします💊。
◎悪性黒色腫。◎
腫瘤状、膨隆状の黒い隆起がみられます。好発部位は口蓋で、40才以上の方にできやすいです。痛みや違和感などの症状はないことがほとんどです。
かなり悪性度の高いがんとなります😢。治療は医科とも連携し、外科的な切除療法、抗がん剤による化学療法、放射線療法などを行います。前述した色素性母斑との鑑別が大事です。
- 黄色い口腔粘膜疾患。●
◎脂肪腫。◎
粘膜下に無痛性の腫れがあり、黄白色を呈します。いわゆる脂肪の塊です。脂肪って黄色いんですよ。症状はほとんどありません。
良性の腫瘍のためそのまま経過をみても大丈夫です😊。病変が大きくなりお口の機能に支障が出る場合は切除術を行います。
◎フォーダイス(Fordyse)班。◎
境界明瞭な黄色の点状の集まりがみられます。好発部位は頬内面や唇で、思春期以降の男性に多いです。加齢とともに増える傾向がありますが、皮脂腺が集積しているだけで、病気ではありません。
痛みや違和感などはありませんし、治療の必要もありません😊。
いかがだったでしょうか。他にも口腔粘膜疾患はたくさんあるのですが、代表的なものを挙げてみました。特に注意が必要なのは前がん病変といわれる口腔扁平苔癬、白板症、紅板症でしょうか👍。ひかる歯科ちえこども歯科でもちょこちょこみかける疾患です。
お口の粘膜は体の中でも直接みることができる唯一の粘膜です。口腔粘膜に直接できる疾患も注意が必要ですし、全身的な疾患の1症状として口腔粘膜に異常がでることもあります。是非観察してみてください。変だな思ったらいつでもみせてくださいね。
2025年3月10日 | カテゴリー:新着情報, お母さん達からよくいただく質問, これがお薦め ホームケア, 歯を長持ちさせるには |