今回は歯をうってしまった場合の対応と、歯をうった後に起こる事についてご紹介します。
まず歯のまわりの怪我に対する対応ですが、、、
歯ぐきや唇、頬、舌の怪我に対しては軽度ならそのまま経過をみます。必要なら投薬や縫合などの処置を行います。怪我の程度がひどく、骨まで影響がでている(骨折など)場合、一般の歯科医院ではまず対応はできません。高次の医療機関への紹介となります。
歯をうった場合、状況は大きく3つに分けられます。まずは「歯が折れた💦」、そして「歯が揺れている💦」、最後に「歯が抜けた💦」です。それぞれについて対応法をみていきましょう。
☆歯が折れた💦
○歯の頭が折れた場合💧。
白い詰め物による修復が基本ですが、歯の神経の露出が強い場合は神経をとる処置が必要な場合もあります。もちろんできるだけ神経をとらなくてすむよう努めています。
○歯の頭から根っこにかけて折れた場合💧。
折れ方にもよりますが、神経をとる処置はほぼ必須となります。保存不能なことも多く、保存したとしても長く持たないことも多いです。
○歯の根っこが折れている場合💧。
揺れがでないよう固定(骨折した時のギブスみたいなもの)を行います。
神経をとる処置も必要なら行います。折れている部位によっては保存が厳しいことがあります。
☆歯が揺れている💦
○振盪(歯牙打撲)💧揺れは軽度、痛みもほとんど無い状態です。
そのまま経過観察します。
○亜脱臼💧歯の揺れがあり、痛みを伴うことが多い状態です。
揺れが強くならないよう、また痛みがでないよう固定を行います。歯ぐきが傷ついていることが多いため投薬も行います。
○脱臼💧歯が元の位置からずれており、揺れ、痛みとも強い状態です。
基本的には麻酔を行い、歯を元の位置に戻します(整復といいます。)。その後、亜脱臼同様固定を行い、投薬を行います。亜脱臼の場合より、固定期間が長くなることが多いです。
ただし、歯の交換期にあたる乳歯の場合は抜歯を選択することもあります。その後大人の歯が出てくるのを待ちます。
また、小さなお子さんで多いのですが、陥入している場合(歯が骨の方向、骨の中に埋まってしまっている。)、お子さんの年齢や協力度によっては整復せず自然法萌出を待つ場合があります。
☆歯が抜けた💦
○脱落💧歯が完全に抜けてしまった状態です。
歯の交換期にあたる乳歯の場合や、抜けて時間が経っているとき(概ね2時間以上)、抜けた歯の保存状態が悪いときは歯を戻すことはせず、傷の消毒や投薬で経過をみます。
それ以外の場合は、抜けた歯の再植を行い、脱臼同様固定、投薬を行います。処置は早ければ早いほど成功確率があがります(できれば30分以内、遅くとも2時間以内。)。固定期間が長くなることが多く、後に神経をとる処置が必要になることが多くなります。
その他の注意点としては抜けた歯の保存方法でしょうか。歯牙保存液があればベストですが、普通の家にはありませんよね。牛乳やお口の中に含んで持ってきていただければ助かります。絶対に乾燥させないようお願いいたします。
以上、簡単にですが歯をうったときの治療方法を書かせていただきました。
実際の臨床ではそれぞれの状態が混合していることも多いため、状態に合わせた処置が必要になります。またいずれの処置後も外傷歯付近
を気にして触ったりしない、外傷歯で咬まないようにしていただければと思います。安静が一番大事です。
それでは次、歯をうった後に起こる後遺症についてです💦。
外傷を起こした歯は、状態によって、白い詰め物で修復したり、神経をとる処置をしたり、整復(ずれた歯を元の位置に戻すこと。)して固定したりします😞。揺れがなく痛みも無くなれば経過をみるのですが、時間たって起こる後遺症ともいうべきものがいくつかあります😞。
打った歯そのものに起こる後遺症と、打った乳歯の後にでてくる永久歯への後遺症の2つがありますのでそれぞれみていきましょう。
☆打った歯そのものに起こる後遺症💦。
○歯の変色💧歯の色がだんだんと茶色、黒色っぽくなっていきます。
変色の原因は歯の神経が打った衝撃でだんだん悪くなっていることにあります。変色が軽度で症状がなければそのまま経過をみます。小さなお子さんですと少しずつ改善する場合もあります(若いってすごいですね。)が、変色が重度で、痛みや腫れ、レントゲンによる異常所見がでてくれば神経をとる治療が必要になります。
○歯の動揺💧
固定を外した直後は一時的に歯の動揺が強くなることがあります。これに関してはしばらくすると改善することが多いので、痛みなどなければ経過をみて大丈夫です。
問題は歯の根っこが吸収してきた場合です💧。乳歯の場合は本来の予定より早期に抜けることになります。永久歯が出てくるまで時間がかかるため、見た目や歯並びに影響がでます。これに関しては対応策があります。
深刻なのは永久歯の歯の根っこが吸収してきた場合です。吸収を止める手段が無いため、もたせるだけもたせ、悪くなったら歯を別の方法で作らなければなりません。外傷歯は前歯のことが多いため大変です。
○歯の根っこの吸収不全💧乳歯のみ問題になります。
乳歯の外傷歯は早期に抜けることが多いのですが、反対に歯の根っこが吸
収しにくくなることがあります。後にでてくる永久歯のでてくる位置や方向に問題があれば抜歯が必要です。
○歯肉退縮💧歯ぐきの形態が不ぞろいになります。
受傷時に歯ぐきの損傷が強い場合、歯ぐきの形態に異常がでてくることがあります。乳歯の場合は永久歯の生え変わりに伴い改善することが多いですが、永久歯の場合は自然にはよくなりません。治すには比較的高難度な外科治療が必要になります。
☆打った乳歯の後にでてくる永久歯への後遺症💦
○エナメル質形成不全💧永久歯の形態や色調に問題がでます。
受傷時の年齢が低年齢であるほど、また、重症度が高いほど発症する可能性が高い傾向があります💧。形態、色調とも白い詰め物などで修復が可能です😊。またこのエナメル質形成不全は外傷以外の原因でも起こります。
いずれの症状も受傷から時間が経って起こってきます。定期的にみせていた
だくことで、異常があれば早期から対応できる場合があります。症状が改善した
後も油断しないようにしましょう。
今回は歯をうったらどうするか、またうった後に起こる後遺症についてみてみました。当院にもよく外傷でお子さんがやってきますが、
実は受傷しやすい年齢や季節があります。年齢としてはまず1才~3才頃。歩けるようになり動きはどんどん活発になります。さらに幼稚
園・保育園にも行き始める時期です。かわいいさかりですよね。受傷原因としては転倒が多く、特に屋内、家庭内での受傷が多くなりま
す。この時期が第1のピークです。
第2のピークは7才~9才ごろ。小学校にあがり生活の自由度、行動範囲がどんどん広がっていく時期です💧。だんだん目が届かなくなりますね💦。受傷原因としては転倒も多いですが、物や友達との衝突も多くなります。屋内よりも屋外での受傷が多くなり、特に学校での受傷が半数を占めます。
季節としては入園や入学、進級し生活環境の変化がある4月~5月、そして夏休み明けの9月~10月に多いです。また性差ですが、これは男の子が女の子より多くなります。特に7才~9才、第2のピークではその傾向が顕著です。やっぱりやんちゃなんですかね💦。
外傷は病気のように予防できる面もあります。起きやすい時期をしっておくことも大事な予防になります。とは言っても突発的な事故で
起こる事も多いです。起きないに越したことはありませんが、起こった時にどうするかを考えておくこと、知っておくことも大切です。何
かありましたら是非ご相談をいただければと思います。
2023年7月3日
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