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食べるって大変なんですよ!

皆さんは「食べる。」をどこまで意識していますか❓呼吸と同じであまり気にしたことないのかもしれませんね。では、「食べる。」のに重要なものはなんでしょうか❓まずでてくるのは歯や歯ぐきではないでしょうか。私達歯医者さんで行う治療や予防も、この2つに対するものがメインになっています。しかし「食べる。」という動作は、歯や歯ぐきで咬むだけに留まりません。実はもっと様々なものが絡む、非常に複雑かつ高度な行為なんです😲。そのため一口に食べられないといっても、歯や歯ぐき以外に原因があることも珍しくありません。今回は「食べる。」というメカニズムを簡単にみてみましょう。きっとびっくりされますよ😊。

 

「食べる。」行為は食べ物の位置から以下の5期に分けられます。ぞれぞれが連続的にスムーズに行われることが大事です😊。

 

🌟先行期。🌟 食べ物を認識します。

食べ物を口へ運ぶ前の段階です。目の前にある食べ物の形や量、質を認識し、口へ運ぶ量や速さ、咬む力を判断し、唾液の分泌を促します。認知症などで問題がでることがあります💧。

 

🌟準備期。🌟 食塊を形成します。

取り込んだ食べ物を飲み込みやすい形態にするため、歯や歯ぐきはもちろん、舌や唇、頬、顎を巧みに動かし、咬み砕いてまとめていきます。そこに唾液が混ぜ合うことでより飲み込みやすい形状がつくられます。これを食塊形成と呼んでいます。歯医者さんでの治療や予防でメインとなる歯や歯ぐきは、この段階の一部を担っているにすぎません。歯や歯ぐきが大丈夫でも、舌や唇、頬などの機能低下や麻痺、唾液の減少などがあれば問題がでてきます。

 

🌟口腔期。🌟 食塊を咽頭へ送ります。

準備期で形成された食塊が舌の動きにより少しずつ後方の咽頭へと送られます。この段階が、嚥下(食べ物を飲み込むこと。)といわれる動作のスタートとなります。このときも舌や唇、頬などの機能低下や麻痺、のどの機能に障害あれば問題がでてきます。

 

☆咽頭とは?

咽頭とはのどといわれる部分の一部です。のどは空気・食物の通り道で咽頭と喉頭からなります。食べ物は咽頭→食道→胃へ流れ、空気は咽頭→喉頭→気管→肺へ流れます。咽頭は高さにより上咽頭、中咽頭、下咽頭に分けられ、これらが複雑に作用し呼吸や発声、嚥下を行います。

 

🌟咽頭期。🌟 食塊を食道へ送ります。

食道の入口部が開大し、咽頭に送られた食塊を咽頭周囲筋と奥舌で食道の入口へ絞りながら送り込むという、まさに嚥下そのものが起こるときです。このとき食塊が食道以外の器官に入り込むのを防ぐため様々な工夫がなされています👍。食べ物が気管から肺に入ると大変ですからね。

 

舌や咽頭筋の機能低下や麻痺、咽頭と食道の連携、気管に食塊が入らないよう喉頭がしっかり塞がれるなどの動作に障害があると、当然問題がでてきます。いわゆるむせや誤嚥が起こるのは、この段階がうまくいってないためであることが多いです。

 

🌟食道期。🌟 食塊を胃まで送ります。

嚥下された食塊が食道の蠕動運動(収縮、弛緩を繰り返し、食塊を胃へと向かって移動させる運動。)により、胃まで送り込まれます。食塊の逆流を防ぐため、ここでも様々な器官が働きます。

いかがでしょうか。「食べる。」って結構大変でしょう。「食べる。」というと歯や歯ぐきが中心というイメージが強いですが、「食べる。」という動作全体でみるとその一部を担っているにすぎません。もちろん他の部位より問題が出やすいですし、目にみえる位置のためわかりやすいというのはあります。しかし、そこばっかりみていると他の大事な問題を見過ごすこともあります。私達歯医者さんもより見識を深めなければなりませんし、注意が必要なところなんです。

それでは次に歯や歯ぐき以外に問題があって、「食べる。」という機能に障害がでている場合に多い訴えをみていきましょう。

★食べ物がパサパサしてうまく食べられません。★

これは唾液の分泌が少なく、食塊をうまくまとめることができなかったり、十分にコーティングできていないため起こる症状です。食塊を食道へ送り込みやすくするのは唾液の役割です。

たとえば、うどんやラーメンのような滑りのよいもの(表面の付着性が小さいもの。)は、あまり咬まなくてもツルッと飲み込むことができます🍜。しかし、クッキーやパンなど滑りの悪いものはしっかり咬んで十分に唾液を絡めないとなかなか飲み込めません🍪🍞。唾液は食塊をまとめやすくし、しっかりコーティング、滑りを良くしてくれるんです。そんな唾液が少なくなると様々な症状がでてきます。しかも原因が多岐にわたるため注意が必要なんですよ。

★お口の中に食べ物が残りやすく、うまく食べられません★

お口の中全体に食べ物が残りやすい場合は舌の機能障害を疑います。お口の中の食べ物を咽頭に送り込むのに舌はとても重要な働きを持っています。また、唇と歯ぐきの間や頬と歯ぐきの間(この場所を口腔前庭と呼んでいます。)に残りやすい場合は唇や頬の機能障害の可能性が高いです。食塊をまとめるには前述した唾液も重要ですが、唇や頬、舌などがしっかり動いて食塊をまとめることも大事な要素です。これらの機能が低下していると、食塊をうまくまとめられず、お口の中に食べ物が残りやすくなります。特に片麻痺で、右もしくは左に麻痺がある場合は、麻痺のある側に顕著に食べ物が残りやすいです😞。

★唾液が多く、溢れてきて食べにくいです。★

こんな訴えもあったりします。でも唾液が多いわけではありません(まれに薬剤の作用で多くなっているときもあります。)。

通常お口に溜まった唾液は自然に飲み込まれます。しかし飲み込む機能に障害があったり、舌の機能が落ちていると溜まった唾液をうまく飲み込めません😅。だんだん溜まってしまいます。唇や頬の機能も落ちている方ではよだれとして出てくる方もいらっしゃいます。

飲み込む機能が落ちているためやはり食べるのに障害がでます。またお口の中に唾液が溜まっているとお口の中に食べ物入りませんよね。そういった点からも食べにくくなってしまうんです😞。

★食事をするとムセてしまい、食べられません。★

 

ムセはすごく難しいです。食べ物を飲み込む(嚥下。)機能に問題があることが多いのですが、他にも認知機能や意識レベルの低下、食べるときの姿勢、食べるペースや量、十分に食塊が形成されていない、呼吸機能の低下など原因が多岐にわたります😞。実際に食べているところをみて原因を探らないといけません。

 

いかがだったでしょうか。「食べる。」には様々な器官や機能が関わっていることがおわかりいただけたと思います。私達歯医者さんでも、『食べられない。』ときくと歯や歯ぐきに1番に目がいってしまいます💧。一般の方ですとなおさらでしょう。しかし、『食べられない。』原因を間違えると、せっかく入れ歯を作ったのに、やっぱり『食べられない。』なんてことが起こります😢。特に御高齢の方は要注意!知らず知らずのうちに様々な機能が低下していることがあります。いろいろな要素を考慮して、総合的に判断しないといけません。

 

この分野は私達歯科医の中でも得意とする方が少ないです。やはり歯や歯ぐきの治療、インプラントや矯正などいわゆる花形の分野を得意とする先生が多いのが実情です。勉強会もそういった関連がおおいですね。私も以前に、訪問診療を熱心にされている先生に師事していたことで、ある程度の知識と経験を持っていますが、まだまだ未熟と言わざるおえないでしょう。もっと精進しないといけないと思っております。